真空注型は、シリコンゴムやアクリルで製作した型に液状の樹脂を流し込み、硬化させて製品を複製する工法です。金型を使用する射出成形と比較して、型の製作費用やリードタイムを抑えやすいため、試作品や小ロットの樹脂部品に適しています。近年では、医療機器・測定機器・産業機器などの外装部品や、展示会用サンプル、量産前の市場評価用部品など、さまざまな用途で活用されています。
本記事では、真空注型の仕組みやメリット、注意点、活用方法についてご紹介します。
<目次>
真空注型とは、シリコンゴムなどで製作した簡易型に液状の樹脂を流し込み、硬化させて複製品を製作する工法です。射出成形のように金属製の金型を必要としないため、初期費用を抑えながら複数の樹脂部品を製作できることが特徴です。
一般的には、まず製品形状の元となる「マスターモデル」を製作し、その形状からシリコン型を作ります。その後、シリコン型に液状樹脂を注入・硬化させることで、同じ形状の部品を複製します。マスターモデルには切削加工や3Dプリンターが多く使用されています。
真空注型は、数個~数十個程度、場合によっては100個程度までの試作・小ロット生産に適した工法です。
真空注型は、主に以下の工程で製作します。
① マスターモデルの製作
複製の元となるマスターモデルを、切削加工や3Dプリンターなどで製作します。
② シリコン型の製作
マスターモデルを型枠にセットし、周囲に液状のシリコンゴムを流し込みます。
シリコンゴムが硬化した後、型を適切な位置で切り開き、マスターモデルを取り出します。
これにより、マスターモデルの形状が転写されたシリコン型が完成します。

③ 樹脂の注入
完成したシリコン型に液状の樹脂を注入します。
真空環境を利用して空気を排出することで、気泡の発生を抑えながら細かな形状まで樹脂を充填します。
使用する樹脂は、硬質・軟質・透明など、用途に応じて選択できます。

④ 硬化・脱型
樹脂を所定の条件で硬化させた後、シリコン型から製品を取り出します。その後、ゲートやバリなどを処理して完成です。この工程を繰り返すことで、同じ形状の部品を複数個製作できます。

一連の工程は以下のようになります。

真空注型の大きなメリットは、金型を使用する射出成形と比較して、初期費用を抑えながら複数の部品を製作できることです。一方で、シリコン型や注型樹脂による制約もあります。
【メリット】
■金型を使用せず小ロット生産に対応できる
射出成形では金属製の金型が必要ですが、真空注型ではシリコン型を使用するため、金型製作に必要な初期投資を抑えられます。数個~数十個程度の試作や小ロット生産に適しています。
■複雑な形状を再現しやすい
液状の樹脂を型に流し込むため、切削加工では製作が難しい形状にも対応できます。また、マスターモデルの表面状態がシリコン型に転写されるため、滑らかな表面や、梨地などの意匠性の高い形状も再現できます。
■材料特性を選択できる
現在の真空注型では、硬質樹脂だけでなく、軟質・ゴムライク・透明・ABSライクなど、用途に応じた材料を選択できます。そのため、形状確認だけでなく、外観・組立性・操作感などの評価にも活用できます。
【注意点】
■ 寸法精度には注意が必要
真空注型では、マスターモデルの精度だけでなく、樹脂の収縮やシリコン型の変形、製品形状、材料特性などが寸法に影響します。特に薄肉部品や大型部品、厚みのある形状では、収縮や変形を考慮する必要があります。
厳しい寸法公差が必要な機構部品などは、事前に加工会社へ相談することが重要です。
■ シリコン型には寿命がある
シリコン型は金属製の金型と比較して耐久性が低く、繰り返し使用することで劣化します。製作できる数量は形状や材料などによって異なりますが、1つの型から20個程度を目安とするケースもあります。100個単位などの小ロット生産では、必要数量に応じて複数の型を製作する場合があります。
■ 量産用の材料とは物性が異なる場合がある
真空注型では主にウレタン系の注型材料が使用されます。南デザインではウレタンゴムは硬度20°~90°、シリコンは30°~60°と、硬度もさまざまな選べますが、量産時に使用する熱可塑性樹脂と同じ材料・物性になるとは限りません。強度・耐熱性・耐薬品性などの機能評価を行う場合は、量産材料との違いを考慮する必要があります。
真空注型は、従来から量産前の試作品を複数個製作するために利用されてきました。
現在では、以下のような用途にも活用されています。
・デザイン確認用の外観モデル
・組立・干渉確認用の試作品
・顧客評価用サンプル
・展示会・営業用サンプル
・市場投入前の少量生産
・医療機器・測定機器などの外装試作
・軟質・ゴムライク部品の試作
・透明部品の外観確認
特に、「量産するほどの数量は必要ないが、3Dプリンターより製品に近い外観や質感のサンプルが欲しい」というケースで有効です。
真空注型は、すべての樹脂部品に適しているわけではありません。
特に、少量でも実際の製品に近い部品を複数個用意したい場合に適しています。
■3Dプリンターでは数量が足りない
社内評価、顧客評価、展示会などで10~50個程度必要になる場合、真空注型が適した選択肢となることがあります。
■切削加工ではコストが高くなる
複雑な外装部品などでは、切削加工で一つずつ製作するよりも、マスターモデルからシリコン型を製作して複製することで、トータルコストを抑えられる場合があります。
■射出成形では金型費が負担になる
量産数量がまだ確定していない段階では、射出成形用の金型製作が大きな初期投資となります。
真空注型なら、比較的安価なゴム型で複数の部品を製造できるため、量産前の市場評価や少量販売などにも活用できます。
真空注型は、シリコン型を利用して樹脂部品を複製する工法です。数個~数十個程度の試作や100個以下の小ロット量産に適しており、3Dプリンターと射出成形の中間的な選択肢として活用できます。また、硬質樹脂だけでなく、軟質・透明・ゴムライクなどの材料も選択でき、外観・操作性・組立性などの評価にも利用されています。一方で、寸法精度や材料特性、シリコン型の寿命には注意が必要です。
「3Dプリンターでは足りないが、射出成形用の金型を作るほどの数量ではない」
このような開発段階では、真空注型が有力な選択肢となります。
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